イギリス人にとっての新聞の位置付け
イギリスでは、”愛読している新聞を聞くとその人の階級がわかる”と言われています。オンライン化が進んでいいますが、日本ほど紙離れしていないのがイギリス人の特徴です。
紙面のサイズによって、
- ブロード紙(Broadsheet)
- ベルリナ(Berliner)
- コンパクト(Compact)
- タブロイド(Tabloid)
ブロード紙は一番大きく、サイズは375×600mm(開いた状態:750×600mm)です。内容は政治や経済など真面目なものが中心で、イギリスでは大きな新聞を広げて読んでいる人は知的な印象を与えます。タブロイド紙の大きさはブロード紙の約半分で、285×400mm(開いた状態:570×400mm)です。主にゴシップや芸能情報が中心の新聞で労働階級の人がターゲットになっています。最近では、ブロード紙でもタブロイドサイズに切り替えている新聞もあり、区別してコンパクトと呼ばれています。
新聞の種類によって値段も変わります。タブロイド紙は50ペンスから、ブロード紙は1.8ポンドから高いもので約3ポンドと3倍以上値段が違います。
日本では、社会的地位によって読む新聞はそれほど変わりませんが、イギリスでは政治や経済情報が載っているブロード紙を読むのは中流階級以上で学歴がある人だけなので、発行部数はタブロイド紙の方が圧倒的に多いです。
英語で新聞を読むメリット
最初は、英語で新聞を読むのは骨が折れますが、英語を学習している日本人向けに書かれたニュース記事では見かけないようなイディオムや表現を学ぶことができます。ズバッと指摘されている英語の見出しも勉強になります。また、日本のニュースは、日本に関係ない話を報道しなかったり、他国で報道されている日本のニュースと食い違いがあることがあります。
新聞の特徴ごとに、記事の内容や信憑性、使われる表現が違います。例えば、ゴシップネタの多いタブロイド紙や、政治的立場が極端な新聞では、書かれている記事を鵜呑みにしないほうがいい場合もあります。もし、イギリス人の友人に、「首相が不倫しているってThe Sunに載ってた」と言われたら”ジョーク”という意味かもしれません。
各新聞社のオンライン版もあるので、どこからでも英語の勉強ができます。各新聞ごとの特徴をまとめたので、新聞を選ぶときの参考にしてください。
各新聞の特徴
イギリスの新聞は、内容によって政治経済や社会問題を中心としたブロード紙と、芸能人や有名人のゴシップネタを中心としたタブロイド紙の2つに分けられます。
さらに、愛読者の多い階級や社会的立ち位置で読者層が変わります。
タブロイド紙
国営にとくに興味がない人々が読む「The Sun (サン)」
タブロイド紙の中で最も売れている新聞です。”ページ・スリー”と呼ばれる過激なグラビアが有名です。
- 読者層
- 労働〜下層中流階級(中立〜保守派)
- Webサイト
- The Sun
噂好きの奥様が読む新聞「The Daily Mail (デイリー・メール)」
読者の半数以上を女性読者が占めています。反移民、反EU主義傾向です。訴訟を起こされたりスキャンダルも多い新聞。
- 読者層
- 労働〜中産階級(保守派)
- Webサイト
- The Daily Mail
腕自慢の労働者が読む「The Daily Mirror(デイリー・ミラー)」
発刊当初は、中流階級の女性向けに作られていましたが、現在では労働階級向けに方向転換しました。タブロイド紙の中ではお上品な新聞です。
- 読者層
- 労働階級(左派)
- Webサイト
- The Daily Mirror
愛国心が強い人が読む「The Daily Express (デイリー・エクスプレス)」
1900年の創刊当時は、”世界一売れている新聞”として有名でしたが、現在ではそれほどです。反EUについては、最も過激な新聞です。
- 読者層
- 労働〜中産階級(中立〜右派)
- Webサイト
- The Daily Express
ブロード紙
お堅いビジネスマン向けの「The Times (タイムズ)」
ブロード紙の中でもっとも売れている新聞です。世界でもっとも古い日刊新聞で、‟Times”を一番最初に使用した新聞です。「The New York Times」の‟Times”はここからパクっています。
メディア王のルパート・マードックに買収してからは大衆的になりましたが、もともとはお堅いビジネスマンが読む新聞でした。タイムズ読者と議論すると面倒臭いことになることも。
- 読者層
- 中産階級(中立〜保守派)
- Webサイト
- The Times
変化を好まない愛国者が好む「The Daily Telegraph (デイリー・テレグラフ)」
この新聞の読者にあまり特徴がないことが特徴の新聞。比較的上流で、愛国心のあるイギリス人らしいイギリス人が読む新聞です。
- 読者層
- 中産〜上層階級(保守派)
- Webサイト
- The Daily Telegraph
エクゼクティブが読む「Financial Times (ファイナンシャル・タイムズ)」
金融街や高級ラウンジに山積みされているピンク色の新聞です。政治的立場はなく、経済・ビジネスに特化した新聞です。
- 読者層
- 中産〜上層階級のビジネスマン
- Webサイト
- Financial Times
自分たちが政治家になるべきだと考える学者が好む「The Guardian (ガーディアン)」
マンチェスター発祥の新聞です。教育、環境保護、人権問題を好む学生や教育関係者が好んで読む新聞です。
- 読者層
- 中産階級、アカデミック(中立〜左派)
- Webサイト
- The Guardian
The Independent(インディペンデント)
新聞業界がM&Aでごたついた時期に、独自の新聞を作ろうと記者が集まってできた新聞社。中立のスタンスをとっています。
- 読者層
- 中産階級(中立〜左派)
- Webサイト
- The Independent
忙しい人向けの新聞「i(アイ)」
インディペンデントの姉妹紙として、2010に創刊された新しい新聞です。現在では、発行部数はインディペンデントを上回っています。全年齢層、新聞を読む時間が足りない人に向けてレイアウトされていて、2015年にはイギリスの国民的新聞紙(British National Newspaper)と称されました。
- 読者層
- Webサイト
- i
フリーペーパー
Metro(メトロ)
イギリス全土で配布されている朝刊です。タブロイドよりの内容です。地下鉄の構内や改札で手に入ります。
London Evening Standard(ロンドンイブニング)
ロンドンのみで配布されている夕刊紙です。国内外のニュースに加え、ロンドンローカルの話題にもクローズアップしています。
イギリスの新聞の特徴まとめ
古い動画ですが、新聞の読者層を皮肉った「Yes,Prime Minister|Who reads the papers?」というBBCのコメディーがありました。
The Daily Mirror is read by the people who think they run the country.
The Guardian is read by the people who think they ought to run the country.
The Times is read by the people who run the country.
The Daily Mail is read by the wives of the people who own the country.
The Financial Times is read by the people who own the country.
The Morning Star is read by the people who think the country ought to be run by another country.
The Daily Telegraph is read by the people who think it still is.
The Daily Express is read by the people who think that the country ought to be run as it used to be.
The Sun is read by the people who don't care who runs the country, as long as she has big tips.
イギリスの階級社会では、どんな新聞を読んでいるかによって周りから品定めをされる恐れもありますが、新聞をネタにするだけで新しい交友関係が手に入ることもあり、面白い文化ですね。