動物性食品を避ける食習慣をもつベジタリアンでは、食事の栄養バランスに余計気を付けなければなりません。とくにベジタリアンに不足しがちな栄養素「タンパク質」を摂取するためのポイントとタンパク質の多い食材をまとめました。
もくじ
ベジタリアンとタンパク質
ベジタリアンの種類
ベジタリアンと一口に括ってもいろいろな種類があります。健康の目的や、宗教、倫理観などベジタリアンになる目的も様々です。
植物性食品 | 乳製品 | 卵 | 魚介類 | |
---|---|---|---|---|
ビーガン | 〇 | × | × | × |
ラクト・ベジタリアン | 〇 | 〇 | × | × |
オボ・ベジタリアン | 〇 | × | 〇 | × |
ラクト・オボ・ベジタリアン | 〇 | 〇 | 〇 | × |
ペスキタリアン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
私自身は、基本的に菜食+卵と食べ、場合によって魚介類や乳製品を摂ることがあるラクト・ベジタリアン〜ペスキタリアンです。ベジタリアンになろうと決めてなったわけではありませんが、オーストラリアのど田舎で暮らしていたときにスーパーへ買い出しに行けないので、日持ちするものしか食べなくなったことがきっかけです。元々お肉はあまり好きではなかったので、野菜とフルーツと乳製品だけで生活ができることを実感して、自然とベジタリアンへとシフトしました。
タンパク質不足で肌が溶けた!
しかし、栄養素に気を付けずに始めてしまったベジタリアン生活だったので、しばらくすると体に異変が起こりました。オーストラリアへ行ってすぐにほぼ菜食のみの食生活になったのですが、オーストラリア生活を始めて9ヶ月目あたりからかすり傷や虫刺され程度の傷がただれてしまうという症状がありました。全身に皮膚潰瘍ができてしまい皮膚がぐちゃぐちゃでシャワーも痛いし、毎日軟膏や保護シートを貼るのにも涙がでるほど痛みがありました。オーストラリアの病院でも日本の病院でも原因がわかりませんでした。抗生物質と保湿と傷の保護をして治るまでに4ヶ月かかりました。5年以上たった今でもそのときの痣が残っています。
はっきりとした診断や検査結果があったわけではないので私個人の感覚ですが、タンパク質やビタミン不足の食事が原因だったのではないかと思います。
現在もベジタリアン生活を続けていますが、食事のメニューに慣れるまではなかなか大変でした。
個人の感覚ですが、仕事が忙しいなどの理由でタンパク質を十分に摂れないことが1ヶ月くらい続くと3ヶ月後から半年後にささくれが増えたり、爪が脆くなったりを感じます。2、3週間程度の期間にずぼらが続いてもすぐにケアをすれば、ささくれなどの自覚症状も感じません。
数ヶ月以上におよんで他の栄養素も含めた栄養不足とストレスを抱えると、オーストラリア時代のようにやんごとない事態になることもあります。
タンパク質が不足したときの自覚症状は?
人のからだの約20%がタンパク質でできていて、水分の次に多い成分です。水分を除いた乾燥重量では75%をタンパク質が占めています。タンパク質は、筋肉・内臓・皮膚・爪・毛髪に多く存在します。食事から摂ったタンパク質は、アミノ酸に分解されて腸から吸収され、アミノ酸のまま代謝や免疫活動に使われたり、筋肉や皮膚などのタンパク質に再合成されます。
タンパク質が不足するとまず、生命維持に必要な代謝や免疫に使うタンパク質が優先されるので、肌・髪・爪は後回しにされてしまいます。タンパク質不足の初期には、ささくれ、爪がかける、肌あれ、髪が痛む、風邪を引きやすくなる、筋力の低下、だるさなどの症状がでます。
ベジタリアンに必要なタンパク質は
1日に必要なタンパク質の量
厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準(2020年版)では、年齢と身体活動レベルにより1日の摂取目標が定められています。
- 成人男性:75〜115g
- 成人女性:56〜88g
アメリカの基準では、1日の推奨摂取量(RDA)は体重1キロあたりタンパク質0.8gです。イギリスの基準では、1日の推奨摂取量 (RNI) 体重1キロあたりタンパク質0.75gです。
成長期の子供や、筋力の低下する高齢者、妊娠・授乳中の女性では、1日に必要なタンパク質はさらに多くなります。また、筋力をつける場合は、体重1キロ当たり1.2〜2.0gのタンパク質が目安になります。
動物性タンパク質と植物性タンパク質
タンパク質には、動物性タンパク質と植物性タンパク質があります。植物性食品しか食べないベジタリアンは、植物性タンパク質のみを摂ることになります。動物性タンパク質と植物性タンパク質では、含まれているアミノ酸の種類やからだで吸収できる効率が違います。
完全タンパク質と不完全タンパク質
タンパク質を合成するのに必要なアミノ酸は20種類あります。そのうちの9種類のアミノ酸は必須アミノ酸と呼ばれ、人の体内で合成することができないため、食事からとらなければなりません。
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
- スレオニン
- メチオニン
- リジン
- フェニルアラニン
- トリプトファン
- ヒスチジン
9種類の必須アミノ酸が全て含まれているタンパク質を「完全タンパク質(Complete Protein)」、9種類の必須アミノ酸のうち1つ以上含まれていないタンパク質を「不完全タンパク質(Incomplete Protein)」と呼びます。
9種類の必須アミノ酸がどれだけ含まれているかを計算したものがアミノ酸スコアです。必要なアミノ酸がすべてそろっていなければタンパク質を合成することができないので、アミノ酸スコアでは一番含有量の少ないタンパク質に基準を合わせて計算されます。
肉類や魚介類はアミノ酸スコア100で、すべての必須アミノ酸がバランスよく含まれている完全タンパク質です。一部をのぞき、植物性タンパク質のほとんどが不完全タンパク質です。
- 大豆
- キヌア
- 蕎麦の実
- チアシード
タンパク質の吸収効率
植物性タンパク質と比べて、動物性タンパク質は人の体内できゅうしゅうされやすく、90%以上を体内で使うことができます。植物性タンパク質では、吸収率は70〜90%と言われています。必須アミノ酸の含有率を表したアミノ酸スコアに加えてアミノ酸の利用効率を計算したものにPDCAAS(タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア)やDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)があります。PDCAASは100以上のスコアは切り捨てて、100%と計算するのに対して、DIAASでは切り捨てずにスコアを出すためより正確にタンパク質の評価をすることができます。
(参照たんぱく質1g中の同じ消化性食物必須アミノ酸のmg数)
アミノ酸プール
からだの中にあるアミノ酸の量は食事から摂取した量と同じ量のアミノ酸が排泄されて常に一定に保たれています。筋肉・内臓・皮膚を構成するタンパク質として使われているもの、血液中にを流れている遊離アミノ酸、細胞質や細胞間質にある遊離アミノ酸の3種類にわかれます。これらすべてのアミノ酸をまとめてアミノ酸プールと呼び、体内のアミノ酸のほとんどは筋肉などの組織を構成しています。
アミノ酸プールが減少してくると、筋肉や皮膚を構成する組織のタンパク質が分解されて血液中や細胞で使うアミノ酸を補おうとするので、肌がカサカサしたり、筋力が落ちてしまいます。反対にアミノ酸を多くとりすぎると肝臓や腎臓に負担がかかったり、尿路結石の原因になります。
食事時間
タンパク質は摂るタイミングの影響も受けます。起きてすぐのタイミングと運動後45分以内ではからだが飢餓状態になっているため、タンパク質の吸収率が上がります。また成長ホルモンの分泌が増える寝る30分~1時間前にタンパク質を摂ると効率的に代謝されます。
1回の食事で摂るタンパク質の目安は、体重1キロあたり0.25g~0.3gといわれています。寝る前の食事では約2倍の0.5gを摂ると良いようです。
タンパク質の多い食事
ソイミート
ミンチ状のソイミートは食べ応えがり、レパートリーも広がるのでおすすめです。炒め物や煮込みの水分があれば戻す必要もないので時短料理にも最適。大豆のお肉のレトルトタイプは癖が強いので乾燥タイプがおすすめです。
- チリコンカン
- ガパオ
- 麻婆豆腐
ひよこ豆・赤インゲン豆
豆類にも多くタンパク質が含まれています。よく使うのはひよこ豆(Chick Pea)と赤インゲン豆(Red Kidney)です。缶詰に入っているものは漂白剤が入っている上に傷みやすいので、乾燥のものを使います。水に一晩以上つけて、鍋で30分程度炊きます。冷凍もできます。ひよこ豆で作るペースト「フムス」や肉団子のような「ファラフェル」もおすすめです。
- チリコンカン
- ダイエットスープ
- キヌアとひじきとお豆のサラダ
キヌア
調理時間も10分で使えるスーパーフードのキヌアはヘルシーで便利です。
- キヌアサラダ
- スープ全般
押し麦
押し麦もスープに入れたりご飯と一緒に炊くことができます。大体キヌアと一緒に使うことが多いです。ゆで時間は20分なので、押麦を茹で始めて10分後にキヌアを投入していっぺんに茹でています。
- キヌアサラダ
- スープ全般
豆乳
豆乳も完全タンパク質の大豆製品なので吸収効率も高いです。朝食にフルーツと豆乳のスムージーに植物性のプロテインとハチミツを足して飲みます。無調整豆乳は砂糖などで味付けされていないので料理に使う場合にも適しています。
- スムージー
- 豆乳スープ
- カルボナーラ
- 無調製豆乳
- 調製豆乳
大豆固形分8%以上
大豆から熱水等によりタンパク質その他成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料
大豆固形分6%以上
豆乳(無調製豆乳)に糖類や食塩などの調味料を加えた飲料
ベジタリアンがタンパク質を上手に摂る方法まとめ
細かい説明が多くなり長くなってしまいましたが、ベジタリアンでも豆類やスーパーフードをうまく組み合わせればストレスなくタンパク質を摂ることができます。改めて自分が1日に摂取しているタンパク質の量を確認するためによく食べる食品のタンパク質量を表にしました。
私の体重と活動量から必要な1日のタンパク質量です。
- 1日の推奨量:35〜90
- 活動量:レベル1~2
タンパク質量(100g中) | 1食分重量 | タンパク質量(1食分) | |
---|---|---|---|
茹で卵(Lサイズ) | 13g | 60g | 7.8g |
納豆 | 17g | 50g | 8.5g |
豆乳 | 3.6g | 200g | 7.2g |
豆腐(木綿) | 7g | 300~400g | 21~28g |
枝豆 | 12g | (40g) | 4.8g |
ソイミート | 50g | 25g~50g | 12.5~25g |
蕎麦 | 10g | 90g | 9g |
玄米 | 7g | 156g | 10.5g |
ひよこ豆(乾燥) | 10g | (40g) | 4g |
フムス(乾燥) | 8g | (30g) | 2.4g |
赤インゲン豆(乾燥) | 9.3g | (40g) | 3.7g |
グリーンピース | 7g | (80g) | 5.6g |
ブロッコリー(茹で) | 3.5g | (100g) | 3.5g |
キヌア | 13.4g | (60g) | 8g |
押し麦 | 6.2g | (40g) | 2.5g |
プロテイン | 70g | 20g | 14g |
これらすべてを毎日食べているわけではありませんが、1日1〜2食の菜食+茹で卵で1日40〜50gのタンパク質を補えています。プロテインパウダーを摂れば簡単に50gは超えています。
製品にもよりますが、プロテインパウダーは小さじ1〜2杯の1回分で15〜20gのタンパク質を補うことができます。海外のオーガニックショップで購入した植物性のプロテインを試してみました。玄米・エンドウ豆・ミックス味の3種類を試してみました。玄米のプロテインパウダーが一番クセがなく飲みやすかったです。
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